西田 晶さん
「船舶整備会社の設立並びに海洋資源活用事業の推進」

事業概要
事業概要:廃業により船舶の整備先がなくなった地域で、事業を引継ぎ、船の整備、販売事業を行う。また、新たにマリンレジャー事業を展開する。
■先ずはビジネスについてお聞かせください。船舶整備会社・株式会社須佐海興を起業した経緯をお聞かせください。
– 20年ほど前から趣味の釣りやマリンレジャーを楽しむため山口市から須佐地区へ度々訪れていました。その中で出会い仲良くさせていただいていたのが、2024年の4月に廃業された船舶整備会社・日本海コマツサービスの社長でした。そして、同年2月に社長から「事業を引き継いでくれないか」と言われ、初めは社交辞令だと思っていたのですが、その後、社長が入院することになり、見舞いに行った際、鬼気迫る雰囲気で「このままでは須佐の水産業が消滅する。私も自動車整備工出身だから西田さんにもできる。」と再度言われました。流石に、二つ返事というわけにはいかず、先ず、直近5年間の決算書を見させてもらいました。当たり前ではありますが、業績が好調であれば、他の仕事をしていた私じゃなくても、同業の方が買収されたり、従業員の方が事業継承されたりするのが一般的なわけで、日本海コマツサービスの経営状態はお世辞にも良いとは言えないものでした。それでも、社長の「須佐の水産業を消滅させたくない」という思いに応えたいと思いましたし、何よりも従業員の方々が「西田さんがやってくれるなら、そのまま働かせてもらいたい」と言ってくれましたので、何とか船舶整備工場を維持できる方法はないかと考え、2つの条件をクリアできるなら「やってみよう」と決心した次第です。その事を社長に伝えに行くと「えかった」と発せられ、心配事が解決したかのように、その翌日、他界されました。ですので、事業継承の手続きや準備ができないまま、代表者不在となり、一旦、事業所を畳み、新たに起業する形にさせていただきました。
■萩市ビジネスプランコンテストに応募した動機や経緯をお聞かせください。
– 応募の理由としては主に二点あります。一点目は、立ち上げたばかりの会社がこの地域の漁業者の方々に信頼を得て事業を継続していくためには、地域外の広範囲の方々にも事業を知ってもらい、利用していただき売り上げを伸ばす必要があります。このビジネスプランコンテストは、当社の存在と新しい取り組みを広く周知していただくための絶好の機会だと考え、応募しました。そして二点目は、正直なところ賞金狙いも大きな動機の一つでした。
■審査員から特に評価されたと思われる点はどこにあったとお考えですか?
– おそらく、日本の水産業が全体的に衰退していく中で、漁業を支える「一次産業に不可欠なインフラ」である船舶の整備・維持管理事業に着目し、新たな形で立ち上げ、持続可能性に挑戦した点が高く評価されたのではないかと感じています。
特に、従来の地域漁業関係者だけでなく、レジャーボートの受け入れを積極的に行うという事業計画は、この地域の伝統的な漁業業界の慣習や既得権益を良い意味で打ち破り、「新しい風」を吹き込もうとする姿勢として評価されたかと思います。
この業界は長年の慣習に縛られ、変わらなければ自ら首を絞めてしまう状況にあります。地域と漁業がともに生き残っていくために、私が変化のきっかけを作ろうとした点が、審査員の方々に伝わったのではないでしょうか。
■現在の事業の進捗状況はいかがでしょうか?当初の計画と比較して、順調ですか?
– 創業から約1年が経過し、この9月が決算期でした。当初、初年度は赤字を覚悟していましたが、蓋を開けてみれば、800万円程度の赤字。当初は赤字幅を600万円から700万円程度と想定していましたので、予想より2割ほど赤字幅が広がりました。
しかし、月次の業績は徐々に改善しています。特に8月はわずかではありますが、単月で黒字に転換することができました。
とはいえ、事業計画全体で思い描いていた目標の実現度としては、まだ50%から60%程度です。特に冬場は閑散期に入りますので、この冬をどう乗り越えるか、新規事業や事業拡大を含め、課題は山積しています。
■当初の想定よりも赤字幅が拡大した主な要因は何でしょうか?
– 率直に言って、私のシミュレーションが甘かったということに尽きます。一つは、売上に対する当初の読みが甘かったこと。もう一つは、初期段階で想定以上のコストがかかってしまったことです。もちろん無駄遣いをしているわけではありませんが、事業を軌道に乗せるために必要な投資が予想を超えて膨らんでしまいました。売上と経費の両面で当初の計画を上回るイレギュラーが発生した結果だと考えています。
■ビジネスプランコンテストに応募して特に良かったと感じることは何ですか?
– 最も大きかったのは、行政との連携がスムーズになったことです。当社の事業は、港湾利用や漁協との調整など、どうしても萩市をはじめとする行政や関連団体と協力が不可欠です。コンテストで受賞し、その内容が公報誌などで広く発信された結果、当社の事業の新規性や地域貢献への意欲が公的に認められた形となりました。これにより、行政の方々と事業に関する話をする際、話が非常に通りやすくなったというメリットがありました。地域で新しい取り組みを行う上での信頼獲得に、コンテストの受賞歴が大きく役立っています。また、コンテストをきっかけに、当社の存在を知り、整備に関する問い合わせをしてくださるお客様も増えました。
■今年度、あるいは今後ビジネスプランコンテストに応募される方々へ、メッセージをお願いします。
– ビジネスプランコンテストに応募されるということは、起業に向けて非常に意欲的な方々だと思います。私が伝えたいのは二点です。まず一点目は、徹底的に緻密な事業計画を立てていただきたいということです。事業を進める上では、必ず予想外のイレギュラーな事態が発生します。それら不測の事態をどこまで深く、細かく想定し、計画に組み込めるかが重要です。そして二点目は、事業計画の中に、売り手良し、買い手良し、世間良しの「三方良し」の考え方を必ず盛り込んでいただきたいということです。起業して健全な事業運営を続けていくためには、自分たちの利益だけでなく、顧客、そして社会や地域全体にとって良い影響を与えるビジネスであるかどうかが、必須条件となります。一度事業を始めてしまうと、やり直しはできますが後戻りはできません。計画段階で、その事業が「三方良し」の原則を満たしているかをしっかり確認していただければなと思います。
