2022年優秀賞 | 渡部 裕臣 Hiroomi Watanabe

萩市ビジネスプランコンテスト

渡部 裕臣さん

「厄介者「うに」を希望の「うに」に」

渡部 裕臣さん

事業概要

事業概要:海藻を食い荒らすウニを駆除するのではなく、野菜くずを使った畜養で商品化し、新規漁業就業者に対して経営安定化のための新たな事業モデルの一つとして確立させる。

■応募した動機や経緯は何でしたか?

– ニューフィッシャー確保育成推進事業に応募し、三重県から移住してきました。当初は地元の漁師さんに師事し、漁業を学び、その後、独立して、現在では、主に、男命イカ(ケンサキイカ)を釣り、活イカを市場に出すだけでなく、沖漬けに加工して、都市部の飲食店などに販売するなど6次産業化も展開しています。漁業者なので、もちろん地元の漁協に登録させていただいています。複数年仕事をしていますと、漁業そのものだけでなく、漁協の現状も知るようなり、負の遺産と言いますか、過去地元漁業の将来の為にチャレンジしてきた事業の中に、目指していた結果が出ないで、本来であれば廃止した方が良いのにも関わらず、補助金や、なんらかのしがらみにより止められずにいる事業があることも知るようになります。そして、須佐漁協の浅海事業部にアワビの稚貝を放流するまで育てる育成施設があるのですが、放流しても海藻がなくて育たないという現状、そして浅海漁業者の高齢化もあり、将来性の見えないものになっていて、水槽ポンプの電気代が生産性なく浪費されており、この施設を有効利用できればと考えたのが、ウニに市場に出せない規格外野菜を食べさせて飼育する事業です。
 この事業を構想する中、知り合いから萩市ビジネスプランコンテストがあるということ聞きました。ビジネスプランコンテストに応募しようと考えたのは、須佐に移住し漁業をして、こんなことをやろうとした馬鹿なやつがおるぞっていうことを、できるだけ多くの人、特に漁業者の方に知ってもらいたいという思いからです。決して自分が目立ちたいというわけではなく、浅海事業部の水槽の維持費は行政から貰うウニの駆除費で賄っているという本末転倒の状況は、そう遠くない将来、破綻して、より深刻な問題になるでしょう。そうなった時に、「そういえば渡部が何か言ってたよな」と話題に出れば、施設活用への議論となれば、という思いで応募をしました。

■現在、事業の方はいかがでしょうか?当初プランどおりでしょうか?また、当初の想定より変化があればお教えください。

– 現状では、ウニを入れるカゴを4つ作り、その中で試験的に4カ月くらい飼育しました。ウニは無事、野菜を食べ大きくなりました。飼育したものは、自ら食べてみたり、知人にわけたりしています。現段階では、浅海グループの許可がなければ地元の市場に出荷できないというローカルルールがあり、市場に出していません。須佐以外であれば出荷しても良いし、厳密に言えば須佐でも出荷しても良いのですが、先ずは関係者に理解してもらってといったところです。また、気の知れた知人に、このような事業を考えていると伝えると、是非卸してほしいと言われ、ニーズがあることも判っています。あと、ウニは季節ものなので、育てる期間が決まっています。現状では年に1サイクルなのですが、水温の低い岸壁の井戸水を使えばサイクル数を増やすことができるのではと考えています。ゆくゆくは水槽の中で産卵でき、幼体から整体まで育てるといった完全養殖みたいな感じなればと思いますが、そうなるとビジネスプランを立てた時の本来の目的と違ってくるのかもしれません。とはいえ、20年も30年もやっていける事業でもないとも感じていますので、できるだけ早く軌道に乗せたいと思っています。

■萩ビジネスプランコンテストに応募して良かったと思うことはありますか?

– 応募し、プレゼンしてみての感想として、法人や大きな会社が、凄い事業プランを持ち寄る、もっと大きな規模のコンテストだと勝手に想像していましたので、ちょっと規模間に拍子抜けしたところはありました。ただ、事業者さんなら慣れているであろう、アイデアを、実際に事業計画書にし、資料を作成し人前で発表することは、1次産業で生計を立てている者にとっては、人生の中で、1回あるかないかの経験ですので、このような機会をいただけるのは有難く、良い経験ができたなと感じています。

■今年の萩ビジネスプランコンテストに応募される方に一言お願いいたします。

– どんなに自分では馬鹿げたようなことかもしれないと思う事でも、資料を作り、発表することで、何らかのメディアで取り上げられ、自分の中だけにあったものが拡がっていきます。自分の中だけで留めておくだけでは手に入らないチャンスがそこにあると思います。特に、漁師さんとか農家さんは、限られた人付き合いの中、ルーティーン化された日々の生活を送り、パターン化されている人も多いと思いますので、このようなコンテストを活用し、新しい気付きを得て、人脈を広げ、凝り固まった価値観から抜け出し、将来性を高めてもらいたいなと思います。